「ロードバイクの科学」

本屋さんでお見かけして立ち読みしてみると,非常に(理系なウンチク志向には)面白い内容だったので迷わず購入.

ホンダ技研の自動車設計エンジニアさんが,自転車雑誌などでは常識のように語られている自転車に関するエトセトラを,彼の工学的知見に基づいて考証・整理した本.自転車雑誌の解説記事って結構(かなり?)非科学的な記事が多いのですが,こちらは著者の本職が工学屋さんなだけあって,論理的で判り易い記事になっています.
データサンプルが(予算の都合からか)著者と著者の息子ってあたりも楽しい.著者としてもサンプルに偏りがあるのは認識していますが*1,実験〜結果分析〜結論への道筋がエンジニアらしくキッチリしているので,データ精度の低さのストーリーへの影響は小さいと思います.
もちろん「僕は文系だから」って人にも是非オススメします.著者は文才もお持ちらしく文章そのものが面白く(小ネタも豊富です),数式などは読み飛ばしても十分に楽しめます.それに,理系な記述と言っても中学・高校レベルの数学・物理の知識があれば十分に理解可能な程度です.自然界の現象(すなわちロードバイクの動き)について,何故そうなの?を正しく理解したいと思う欲求は人間の本能のハズですから,じっくり読んで少しずつでも理解していけば更に楽しめると思います.
はっきり言って,下手な初心者向け自転車本や,そこらの自転車雑誌よりも,ぜんぜん初心者向けの本だと思います.初心者が疑問にもつところ・迷うところを,科学的に理解できるからです.お勧めです.
(というか,なんでこういう本を自転車雑誌編集部が作れないのかね?? TOKが面白いと思った自転車誌って,例えばターザン別冊だったり,自転車とあまり関係ない編集部から出てくることが多いのです.)

*1:あとがきにて「別データによる反証も,追試による補強も大歓迎」と述べています.