私の感想「風立ちぬ」

季刊BLOGかと思うような久しぶりのエントリ、お久しぶりです。落ち込むこともあったけど、私は元気です。この夏話題のジブリ映画「風立ちぬ」を夫婦で鑑賞してきたので、感想を書きたいと思います。

この作品、宮崎駿の自伝的映画なのは明白です。
主人公は駿の投影。飛行機という人殺しの道具、兵器に美しさを見出してしまう、自己矛盾がテーマ。

これまでの宮崎アニメは、観客を作品世界に誘う映画が基本。
ナウシカ」「ラピュタ」しかり。「ポニョ」しかり。
風立ちぬ」と同じく駿の投影と言われる「紅の豚」ですら、そう。
観客はその作品の世界に入り込み、時には主人公になって、その世界観を共有する。(だから、宮崎アニメは家族で見に行って、みんな一緒に楽しめるのだ。「ラピュタ、わくわくしたねー」「千と千尋の世界、綺麗だったねー」ってね。)

ところが「風立ちぬ」は違う。
駿の作品世界に入り込むのではなく、駿の作品世界(つまり駿の生き方、人生解釈だ)を通して自分の内面に入り込む。作品テーマ「自己矛盾」を、翻って自分はどうだ、と考えさせる。観客一人ひとりの内面次第で作品の解釈も変わる。
今作、これまでの駿映画と違うといろんな要素を指摘されているが(主人公が青年とか、ラブシーンが、とか)、これまでの作品と一番違うのはそこだと思う。

良い映画かどうか、と言われれば、間違いなく良い映画です。
満足する映画かどうか、と言われれば、今の私の場合(上記理由より、あえてそう書きます)は「大いに不満」な映画だった。

ぶっちゃけて言いますとね、『駿カントクの半生記で語るメインテーマが「自己矛盾」程度なんかい。』という言いようのないガッカリ感なんですよ。「美しさを追求して人殺しの道具を作る原罪」なんて、技術屋さんなら程度の差こそあれ、誰もが向き合って吹っ切ってる問題なわけです。38歳の若造ですら自分で答えを持つレベルのテーマを、日本の超一流アニメ監督が自身の半生記のメインテーマにしちゃうんだ、しかも答えが『そんなの当たり前じゃん』レベル。
もちろん作品の細部を見ると、テーマ設定はそこだけじゃなく、いろんなところに設けられてるんだが、一番目立つものがそれだったので、萎えちゃいました*1

でも、良い映画なのは間違いない。それは保証する。

私の場合も、現時点では自分なりの答えを持てていただけで、状況が変わった別の時期にこの映画を観直せば、もしかしたらまったく違った感想を持つかもしれない。誰かが「宮崎駿の、老人の夢想語り*2」だと評していましたが、まさにそれです。

一人で観に行くことを強くお勧めします。誰かと一緒に観に行っても、間違いなく感想は噛み合わないですから。映画のあとのディナー感想戦が微妙な空気になりますよww

*1:大衆娯楽というメディアでやるんだから、もうちょっと観客のバックボーンを越えた普遍的共通テーマを前面に押し出した方が良かったんじゃないかってこと。

*2:だから SEを人間の口で作った音にしたんだと思いますよ