キング・コング

TOK2006-02-04

公開されて随分経つ映画だけど,今更ながら見てきました.
・・・素晴らしい!!!!
とても面白い.監督はもちろん,脚本家やキャストも含めて,この映画に関わった全てのスタッフはみんなオリジナル(1933年)のキング・コングが大好きなんですね.オリジナルの本質を理解した上で,ピーター・ジャクソン監督流のキング・コング像に実に上手くリメイクできていたと思う.文句なしの娯楽作品に仕上がっていた.
冒頭の,パッとしない喜劇女優 アン(ナオミ・ワッツ)が落ち目の映画監督 カール(ジャック・ブラック)と遭遇してベンチャー号で出港するまでの(多少強引ともいえる)小気味良い展開で,僕はすっかり作品世界にハマってしまった.ベンチャー号がアメリカを出港するまでの序盤の部分が,この映画に魂を入れていると私は思う.そして骸骨島に渡ってからの映像描写,特に少々時代錯誤ともいえる原住民の表現なんかは,おそらくオリジナルを見た昔の印象を忠実に再現したんでしょう.いい大人な私が見ても恐怖心を抱くような印象的な映像だった.そして,コングがアンを連れ去っていくシーンから,コングがアンに心を奪われるダンスシーンまでのお話は,素晴らしいの一言.
N.Y.に戻ってからのお話は完璧.迫力あるコングの暴れップリは,面白くもあり,アンを追い求めるコングの悲しみも感じる.そしてアンと再会してからのつかの間の幸せ.そして氷の上での素敵なダンス(?)シーン・・・から一転し,軍隊に追い詰められていく緊迫した場面.メリハリの効いたシーン切り替えがとても面白かった.アンと共に朝日を迎える摩天楼のシーンは,切なくて切なくて,大好きだ.摩天楼の頂上に故郷の自分の巣を重ねていた*1コングの眼の切なさが凄く良かった.
難点を言えば中盤の無駄な長さかな.恐竜v.s.コングのシーンや,恐竜の大群や虫の巣で人がどんどん死んでいくシーンなんかはバッサリとカットしても良かったと思う.確かに CG映像的には凄いけど,ストーリー的には特に必要のない映像.ストーリーが中だるみしてしまったせいか,唯一ここだけは集中力が途切れてしまった.骸骨島のシーンで重要なのは,アンとコングの関係,島の美しさ,コングの島での生活を観客に示すことだ.無駄な CGシーンを入れて 3時間にするよりも,あの辺りを思い切ってカットして,序盤の航海のシーンで最悪の出会いをしたアンとジャックが強く惹かれあうまでの描写を 30分追加したほうが良かったと思う.その方が,摩天楼でのコングとの別離からジャックが抱き合うまでの流れにもっと深みが出たと思うのだ.
あと,ピーター・ジャクソンの責任じゃないけど,ラストシーンのカールの台詞「It was a beauty killed the beast.」を「野獣を殺したのは美女だ.」と訳したのは如何なものかと.骸骨島でいろんな意味で「美(beauty)」という単語を使っていたように,この作品での「beauty」は様々な「美」を示すもので,必ずしも「美女」を意味しないと思うんですよね.このシーンでの beautyでも,翻訳者の理解を押し付けることなく,もう少し観客に解釈を任せるような訳語を当てて欲しかったなぁ・・・.
それにしても,ナオミ・ワッツはとても綺麗だった.

*1:骸骨島の巣の遺跡のシルエットと摩天楼とが似てるんですよ